味の設計図を作る 2


今回は、具体的なコンセプトの立案手法お伝えします。


先ず、メニューコンセプトの立案手法です。
メニューを構築する際に大事になることは、
店舗コンセプトと、連動していることです。

お笑いになるかもしれませんが、
店舗コンセプトと連動していないメニューを、
あなたもご覧になったことがおありと思います。

あなたは今まで経験されたお店の中で、
どうしてこの店で、
この商品なのかと思ったことはありませんか?


私はあります。
何故、これなのかな?
何を狙っての事なのかな、と。

当然のことですが、メニューコンセプトは、
店舗コンセプトと連動させましょう。

次に、メニュー開発には、マーケットインの発想を持つことです。
多くはプロダクトアウトの発想で商品を構築してしまいます。

マーケットインとプロダクトアウトに関して、
ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、
念のために説明をしますと、
マーケットインとは、
狙っているマーケットの消費者が、
潜在的に望んでいる商品を見つけ出し、
的確に提供することを指します。

プロダクトアウトとは、マーケットのニーズを鑑みることなく、
自社の提供できる商品を基準に、商品を構築する手法の事です。

一般的に、自社の商品はこの地域の方々に受け入れられるのか否かが、
論点となる開発手法のことです。

このやり方が、マーケットに受け入れられることは、
今ではかなり少なくなってきています。

マーケットインとは、リサーチと仮説検証により、
その地域の消費者の要望を調査し、
商品を開発する手法の事で、
今ではこの方法を採用することが、
繁盛する必須条件となっています。

消費者の視点に立っての消費開発手法ですから、
大きなミスを犯すことは少なくなります。

一般的なリサーチの行い方は、
既存の競合店の売れ筋商品を確認し、
消費者が支持しているポイントを分析するために、
実際に体験してみます。

ネーミング、使用食材、見た目、ポーション、食感、
シズル感、売価、味の方向性と特徴、経時劣化の状況、
他のメニューとの関係性、
完食後の感覚などを確認します。


ここで大事なのは、自社の商品と比較して、
劣っている点ばかりに注意を向けないこと。

これも良く目にする光景ですが、
競合店に視察に行って折角商品を検証する目的なのに、
自社の方が優れている、この店の商品が売れる理由がわからない、
挙句には、この店のお客は味を知らないと、
大切なお客様まで否定する開発者がいます。


語弊を恐れずに言いますが、
最悪の開発者です!


素直に学ぶ姿勢が無く、
消費者がその商品の何に響いているのかを、
感じることなく、ただ自社の優位性を誇って帰ってくる。

時間と経費の無駄です。

ハッキリ申し上げたいのは、
その開発者の方がどのような感想をお持ちでも、
リサーチに行ったお店の商品は、
確実に売れている場合がほとんどです。

でなければ、リサーチの対象にはなりません。

既に自社の商品よりも売れているんです、
消費者に、マーケットに、受け入れられています。

ですから、リサーチは真摯に公平に謙虚に行いましょう。

次に、大事なのが、現在売れている商品の、
どこを工夫すればより売れるようになるのかの、
仮説を立て検証することです。


同じような商品をマーケットに提供しても、
先行優位性を崩すことは容易ではありません。
何をプラスすれば、もしくは何をマイナスすれば、
もっと消費者の心を掴めるのかを検証します。

消費者の隠されている欲求を探し当てます。
この作業が一番大事であり最も大変な作業で、
何よりもワクワクする工程です。

この隠れている欲求をも見つけられると、
金脈を発見したようなものです。


その商品は爆発的に売れ、消費者が価値を感じ、
会社の業績は伸び、業界内にポジションを確立できます。

ですから、メニューコンセプトを作成する際には、
必ずリサーチを行い、
マーケットインの手法でメニュー構築を行います。


次に、ペルソナです。
理想の顧客像を明確にします。
リサーチの結果をもとに、このお客様なら、
どのように食事を楽しまれるのか、
どのような消費形態を取られるのかを設定します。

その仮説から、メニューの方向性を決めていきます。
食材はどのようなこだわりを持つのか?
ポーションはどの程度か?
シェアメニューは持つのか?
味の方向性はどのようなのか?
メニュー数とパーティーメニューは?
どれぐらいの時間消費で何品提供するのか?
その際に総グラム数はどれぐらいに設定するのか?
単品のプライスレンジ、プライスラインは、
想定客単価は、想定組人数はどれぐらいかを決めます。

誰に何をどのように、どれぐらいの量を、
どれぐらいの時間軸で提供するのかを、
決めます。

次に提供するメニューで、
お客様にどのような感情を感じて欲しいのかを決めます。

お腹一般になって欲しいのか、
満足されてお帰りになって欲しいのか、
新鮮な食材を堪能して欲しいのか、
希少価値を感じていただきたいのか?
どのようなことでも、お客様にある感情を感じて頂くように、
メニュー構築し、コンセプトに明記します。

多くはこの概念が無いので、
ただ美味しい美味しくないの議論となってしまいます。

商品を通じてどのようなことを、
お伝えするのかを決めましょう。

これらが決まってくると、具体的な商品コンセプトに移行できます。

メニューコンセプトに沿って、
具体的な商品カテゴリー、カテゴリーごとの商品数、
ポーションイメージ、売価イメージ、
使用食材、仕込み作業イメージ、使用食器イメージなど、
より具体的なことが見えてきます。

パーティーの組み方と、パーティーのスタイルなども見えてきます
パーティーのテーマは、売価は何本立てるのか、
立食はありなのか、貸し切りは、ブッフェは、など
具体的なことが見えててきます。


このあたりから、料理長は頭がフル回転してきます。
メニューコンセプトで目的と方向性と狙いがはっきりとし、
商品コンセプトで、具体的に何を求められているのか、
何を提供すればよいのか、使用食材の特徴は、
具体的な商品アイテムは、など、映像として見えてきます。

ここまでコンセプトを作りこむと、
料理長はブレルことなく開発に没頭できます。

そこで、次に味の設計図を作ります。

これはお店の顔となるメイン商品、
いわゆる柱メニュー数品の味の設計図を作ります。


前回のブログでも書きましたが、
その柱商品の構成要素は何か?
何を一番強く表現したいのか?
食材は何を使用するのか、
全体的な味の方向性は?
塩味はどの程度表現するのか?
甘みはどの程度感じさせるのか?
コクはどの程度まで引き出すのか?
旨味の主成分は何で、どのように抽出するのか?
香りはどのフレーバーを引き立たせて、
どの段階で感じさせるのか?
などを、一覧表にして表現します。

特に旨味をどの素材から抽出して、
どのバランスで表現することが、
最もインパクトがあるのかを検証します。


先だって精進料理を作る機会をいただき、
宿坊の方とご一緒させていただきました。

当然、全て植物性の食材から旨味成分を引き出していきます。
一緒に調理を楽しんでいる時に、ご担当の僧侶の方が
「時々街に出ると沢山のお店がありますよね、
 美味しそうなお料理が沢山あり、それは目移りもしますが、
 あのラーメンの臭いだけはダメですわ!
 出汁が臭すぎて私たちには無理です(笑)」と、
突然おっしゃいました。

出汁を効かせることをテーマにラーメンを作ることが多いですが、
出汁臭いという感想は中々聞けないなと思いながらも、
以前、赤羽で試食したラーメンを思い出しました。

そこのお店は、そこそこの繁盛ぶりでしたが、
リピート率が低いので調査して欲しいと依頼されたお店でした。

お店に入ってすぐに、煮干しの臭いが強烈に香ってきました。
最初はなるほどと、思いましたが、5分が限界でした。
煮干し臭すぎて、いられなくなりました。

ほどなくラーメンが出て来ましたが、
煮干しを大量に使った出汁のにおいがきつく、
しかも、魚粉も乗っており節オイルも使用している、
そのようなラーメンでした。

これではリピート率が低いのも納得です。
一度食べれば二度と行きたくありませんでした。

体にもビッタリと煮干しの臭いがつく始末でした。

僧侶のお話しを聴いて、赤羽の街が頭に浮かんできました。


最後は、ちょっとお話しがそれた感じがありますが、
このラーメン屋さんの店主は、
商品に特徴を持たせたかったのだと思います。
オリジナルの味を作りたかったのだと思います。

しかし、味の設計図を作らなかったので、
どんどん足し算をしてしまい、
食材の個性をケンカさせてしまいました。

まるで、ノーガードで殴り合っているかのようなラーメンでした。


今日は、メニューコンセプトと商品コンセプト、
そして味の設計図の手法を紹介しましたが、
言うまでもなくお客様が直接消費し、
お金を払う直接的な対象は商品です。

美味しいのは勿論、売れる味、支持される商品の開発が、
飲食業には最も大事です。

お客様の想いを感じ、見えない欲求を探り出し、
商品を開発してみてください。

明日は、試作会と試食会のお話しをさせて頂きます。




確実な価値と、豊かな成果のために
2018年10月23日(火) No.280 (商品関連)

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