理念経営の本質  その3


さて、昨日の続きです。

チーム編成が出来た次に行うことは、
理念に表現する項目を設定します。

理念は、働く仲間・お客様・取引先・地域社会との
“強烈な約束”と捉えて下さい。


この働く仲間・お客様・取引先・地域社会とどの様に接し、
本質的にどの様な関係を構築し、
維持することが望ましいのかを考えて、
項目を設定して下さい。

現在の状況やスタッフの能力などの外部要因を排除し、
とにかく、本質的に望むべく姿のみに意識を集中して、
項目を設定してください。


必要な設定項目は、以下の通りです。

1. 企業と店舗の正しい在り方
2. 企業人やサービスマンとしての正しい在り方
3. 社会や地域に提供するサービスの正しい在り方
4. 取引先などのビジネスパートナーに対する基本的な考えや接し方
5. 常に正しい発想とコンプライアンスに対する考え方

以上の項目を設定します。


部門ごとにそれぞれ望むべき姿を文章で表現します。

ここで重要な事は、現在形で表現することです。
“このようになりたい”とか“これを目指します”などの、
希望的観測の表現ではなく、
“こうなります”“こうである”と言う、
現在形進行形で表現しましょう。


先に紹介した、リッツカールトンホテルの表現は、

「淑女・紳士をおもてなしする我々は淑女・紳士である」です。

英語圏の表現と日本語の表現の違いもあると思いますが、
「淑女・紳士である」と断言しております。

「淑女・紳士となることを目指します」とは表現しておりません。

“なりたい”と表現してしまうと、
なる必要性のある現実が引き寄せられてしまします。

必ず、現在形進行形で表現しましょう。


次に作成の段階で最も重要な点は、
どの様な意見も、基本的には「NO」を言わない事を、
絶対のルールとしましょう。

その意見が出る背景にある物に目を向けるようにし、
頭ごなしに、出てきた意見を否定する事は避けましょう。


これはそれぞれのチームにより、
見えている景色と環境が違います。

関係するスタッフの成熟度にも違いがあります。

出てきた意見の背景を鑑みて、
その意見を検証するようにしましょう。

仮に、NOを突き付けてしまうとどうなるかと言いますと、
それ以降は前向きな意見が出てこなくなるばかりか、
運用段階で他人事となり、自分自身が取り組むことへの、
大きな障害となります。

ですから、どのような意見も、
一見、稚拙に思えるような意見にも真摯に向き合い
その稚拙と感じてしまう意見が出てくる背景と、
なぜ自分自身がそのように感じてしまうのかを、
考え、感じてみてください。

自問自答が出来ないと言うことは、
新たな気付きを得る弊害となり、
成長を阻害する原因にもなります。


当然、複数の意見や見解が出る事は、
容易に想定できます。


ここで、否定的な意見と態度を表明してしまうと、
会社が一体となり理念を作成すると言う大きなビジョンが、
有名無実になってしまします。


従って、どの様な意見も否定せずに、
なぜそのような考えに至ったかを探るようにし、
本質を見極めるようにします。


次に、各チームよりそれぞれの理念が出て、
まとめの段階に入ったら、表現を工夫しましょう。

ある項目では、どのチームの理念が最も腑に落ちるか、
行動を起こす際の基準となる表現なのか、
進むべき方向を示しているのかを決定しましょう。


勿論、幾つかの表現を組み合わせて、
表現し直すことも有効です。


その際に、複数の違った表現をしてみることをお勧めします。

表現の違いにより、同じような事でも、
全く違うニュアンスになってしまう場合があります。

しっくりと腑に落ちるまで、表現を工夫してみましょう。


表現がしっくりと、腑に落ちるまで完成したら、
次は、スタッフが自ら考え行動を起こす為に必要な、
正しく効果的な運用方法を作成することです。


文章が固まったら、理念を1枚のカードにしましょう。

先に紹介したリッツカールトンホテルでも、
ご存知のように1冊のカードにして、
常にスタッフは携帯しております。


通常私は、テスト導入の期間を設けることをお勧めしております。


数週間から数カ月の期間を設定し、
その理念を具体的に実行してみましょう。


効果測定の収集の場として、『理念実証会議』を、
開催することをお勧めします。

この会議は、理念の運用に関し、
活用具合の発表の場であり、
複数の事例の検証の場であり、改善の場です。

常に運用の度合いをチェックし、
バージョンアップする場にします。

理念実証会議で重要なことは、
その運用の成果を発表する場にする事です。

運用方法に関する非難や、
人物評価の対象の場となることを避ける事が、
重要ポイントです。


あくまでも、より良い運用の方法を探る場であり、
出来ていない部分の指摘や、
個人的な人材特性の改善の場ではなく、
関係者全員がチームとしての、
効果的運用方法をステージアップさせるための場にしましょう。


何度も言いますが、理念は運用こそが全てであり、
作れば良いとか毎日唱えるような物ではなく、
スタッフの行動に直接的に表れるものでなければなりません。


そのために、現場では定期的にあるテーマを設定し、
理念を表すために正しい考え方と、
具体的な行動は何なのかを検証する機会を設けます。

例えば、「お客様に感謝と喜びをお伝えする」、
という理念を設定したとします。

では、具体的にお客様の感謝と喜びをお伝えする際の、
正しい考え方はどういった考え方なのか?
そもそもなぜ、感謝の必要があるのか?
感謝とはどういった行動に現れるのか?
感謝を伝えるタイミングで、最も効果的なタイミングは?
感謝を伝えるだけではなく、
お客様に感動をお伝えする感謝の方法とは?

どうすれば喜びをご提供出来るのか?
そのために自分ならどのように考え行動するのか?
お客様の感情を常に感じ取るためには、
どのようなことに注意を注ぐべきなのか?
そもそも、喜びを提供する意図はどのようなものなのか?
など、具体的な議論を重ねながら、
ケーススタディを行います。

このケーススタディが具体的な理念を表現し、
現実化させる最も重要な行動を起こさせる学びとなります。


次に、スタッフが自ら考え行動を起こす為、
具体的に理念をどの様に導入し、
業績改善をはかれば良いのかを紹介します。


具体的な業績改善を行う場合は、
強制的に現実に向き合う必要が出てきます。


強制的にとは、理念を作成する段階で、
心理的な作用として
“希望的観測” が盛り込まれてしまします。

深層心理では “こんなことをしても絶対できない” と、
思いながら作成する場合があるからです。

これでは、幾ら素晴らしい理念を作成しても、
業績の向上に直結することはありません。

必要な事は強烈に、恒常的に、
マインドセットをする事です。


理念を作成しただけで満足し、
行動を変化させない経営者が多くいる事も事実です。


導入後は、経営者自らが行動を変化させる必要があります。


経営者をはじめスタッフ全員、
今までの行動規範の延長では、
業績改善は望めないことを認識する必要があります。


強烈にマインドセットし、
日々の行動を大きく変化させることに、
コミットメントしましょう。


他人を変えることは容易ではありませんが、
自分を変える事は、比較的容易に出来る事です。


先に私は、“考え方の癖を直す”と表現しましたが、
この導入の段階で私の“考え方の癖を直す”を、
最も多く実感することが、過去の例では多いようです。


先ずは、ご自身の“考え方の癖”を改善していきましょう。

その為には、強制的に現実と向き合う事が、
絶対的に必要になります。


前例と経験則を排除し、
本質的にあるべき姿のみを集中的に意識して、
感じて行動してみて下さい。

自らの心理的な変化が、
多くの現象を改善していきます。

業績改善するには、
ある程度の時間が必要になります。

一刻も早く理念経営を導入し、
スタッフの悩みを解消させることを進言します。


現場のスタッフは行動を起こす事に、
抵抗をしているのではありません。

その行動を起こす際の基準があいまいで、
どの様に行動すればよいのか解らないでいる場合がほとんどです。


スタッフが自ら考え行動を起こす為には、
明確な基準が必要になります。

考え方の癖を見直し行動を変化させる為に、
理念実証会議を有効に活用しましょう。


普段から理念に触れる機会を多くし、
事あるごとに、行動をチェックする事がポイントです。


その為にはゴールの設定が必要になります。


売上のように、直接的なゴールは確認がしやすいので、
有効に感じられますが、
それ以上に重要なゴールは、
正しく考え、効果的に有効な行動が起こせたかどうかを、
ゴールとすることです。


考え方の癖を改善し、理念に従った行動を起こし、
お客様に正しく自社のサービスや商品が、
提供されたかを確認する事が、
恒常的業績向上に直結します。


短期的に数字を追いかける事も重要ですが、
“恒常的に業績を改善する癖”を育成することの方が、
より重要になります。
売上至上体質から、利益満足体質へと、
企業体質を変化させましょう!

自社とスタッフのステージアップを図り、
スタッフが自ら考え行動を起こす為には、
正しく理念を設定して、速やかに導入し、
効果的な運用を実施し、ある程度の時間軸を持って、
成果を達成していくことが必要です。

是非、チャレンジしてみてください。

おすすめします!



確実な価値と、豊かな成果のために
2018年11月09日(金) No.286 (経営関連)

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