理念経営の本質   その1


最近経営者の方とお話しをすると、
理念経営の話題が頻繁に出て来ます。

理念経営に関しては、
多くの本が出版されてもいますし、
又、セミナーなども開催されていたりして、
学ぶ機会も多いと思います。


なんとなく理解しているようで、
実際には理解できていないような、
不思議な感覚であると、
お話しをさせて頂いた経営者の方々は、
仰る場合が多いです。


理念経営は概念としては理解できるが、
実際に経営に落し込むにはどうすればよいのか、
現場に落し込むにはどうすればよいのか、
又、本当に効果はあるのか、
懐疑的な意見があるのも事実です。

さて、ここで、飲食業において、
理念経営を導入するメリットは、
どのようなことか少し考えてみましょう。


理念経営の一番の利点は、
経営者の想いを言葉にして表現し、
社内に現場に浸透させれる点にあり、
そのことにより、従業員満足が向上し離職率が低減し
顧客満足度が向上し、リピート率も向上し、
客単価も伸びます。
その結果、業績が改善し収支構造も改善します。

夢のようですが、これは事実です。


正直に申し上げますが、
最前線でお客様に接している現場のスタッフには、
経営者の想いは、理解出来ているようで、
なかなか理解できていない、
浸透していないことが多々あります。

これは事実だと言えます。


過去にも、トップの方は素晴らしい理念をお持ちでも、
実際に現場を視察すると、
首を傾げたくなる場面に出くわすこともしばしばありました。

何故このようなことが起こってしまうのか?

それは、トップの想いを、理念を、
明確な言葉にして表現していないからです。

よく、社是や社訓などを掲げている会社さんもあります。
毎朝、朝礼の際に全員で唱和する会社さんも沢山あります。

しかし、この方法では理念の浸透はおろか、
そもそも、スタッフは理解しようとは思いません。

毎朝のつまらない儀式となり、
ただ、大きな声で語っているだけで、
全く今日の営業に反映させることも、
目の前のお客様に、会社の理念が伝わることもありません。


そもそも社是・社訓と理念には大きな違いがあります。

社是とは、会社が考える正義・正論、考え方や在り方、
社訓とは、会社が守るべき教訓なり教えです。

では、理念とは何でしょうか?

理念とは、企業の経営や活動に関する、
基本的な考え方、価値観、思い、
そして企業の存在価値を表したものです。


社是、社訓は、企業の在り方や進む方向性、
それを実行するにあたり守るべき教えなどを表します。


理念は社是・社訓を具体的な現実にするために、
実行すべき行動指針や行動基準、
心のあり方を表現したものです。

いかにして地域の方々に貢献するのかを、
明確にするもので、会社の存在価値を見出すものです。


この理念に沿った経営を行うことを、
理念経営と言います。


ですから、具体的な行動に関する記述と、
具体的な行動計画が無ければ、
理念は浸透しません。

理念の浸透は、これからの会社経営には、
とても重要となる概念です。


トップの方の想いを具体的な形にしていくのは、
最前線で働いてくれているスタッフの方々です。


その彼らが、考え方の基準をどこに合わせ、
どのような指針に沿って行動をするのかが、
深層心理ベースで理解出来ていなければ、
効率的で効果の高い活動は行えません。


昔から、その人が信用に足る人物かどうかを判断する際に、
その人の言葉を聞くよりも、
その人の行動を観察しなさいと言われます。


言葉では取り繕うことが出来ますが、
その言葉通りの行動を起こすか否かが、
その人の本質と言えます。


会社の理念は、この具体的な行動を起こす際の、
基準となりゴールを明確化するものです。


最前線のスタッフ一人一人が、指針に沿った行動をおこすとき、
具体的な成果が表れ、理念が現実となり現れます。

ここで、少しだけ事例をご紹介したいと思います。

九州地方のある有名企業で、現実におこったことです。

そのお店は、地元の有名店であり、超繁盛店です。
ある全国的に有名な商品の、
発祥の店の一つとして有名なお店です。


そのお店が、今から数年前食中毒を発症させてしまい、
数百人規模の被害者を出してしまいました。


当然、営業停止となり、
社長は被害者のお宅を一軒一軒訪問し、
直接謝罪を行ったそうです。


その際に、何故このようなことが発生したのか、
自問自答をなさったそうです。

幾日が経過し、たどり着いた答えが、
会社に理念がなかったことが原因だったと、
気付かれたそうです。

これを機会に、これからは理念に基づいた経営を行なおうと、
強く決意なさったそうです。


その後この社長は、理念経営の勉強をするために、
積極的に勉強会に参加し、
数か月かけて新たに会社の理念を作られたそうです。

それから、その理念の浸透を目指すべく、
社内で勉強会を開きスタッフ一人一人と面談をし、
一人一人に浸透させる具体的な活動を、
地道に行っているそうです。


あれから数年経過しておりますが、
当然、今でもこの活動は継続しております。

その結果、このお店は急激に業績が改善し、
事件があった当時は、会社整理のことまで考えたそうですが、
今では店舗レベルでの利益率は、
30%を超えるほどに、
大幅に成長なさっています。


この社長さんとは、お目にかかる度に、
理念経営のお話しをさせて頂いております。

いかに理念が大事か、
理念を正しく浸透させるために、具多的な行動がいかに大事か、
常に自分に向き合い、
スタッフに向き合い、
お客様に向き合い、
自問自答しながら経営をなさっておられるそうです。


ここで私事ですが、私の恥ずかしい過去を暴露します。


今では、このブログでも偉そうに、
理念経営の大切さを問うている私ではありますが、
以前の私は、理念経営が全く出来ておらず、
自分の会社を倒産させてしまいました。

その当時のクライアントに、

「須田さんの理念は素晴らしいですが、
 全くスタッフには浸透していませんね! 
 経営者としては、未熟、いや、失格ですね!」

と、言われてしまった経験もありました。

その言葉から1年後に、
私は会社を倒産させてしまいました。


折角お客様がご指摘して下さったにもかかわらず、
学ぶことなく倒産させてしまいました。

ですから、誰よりも理念経営の大切さと、
効力を理解しているつもりです。

時代が大きく変化している現代です。

政府も働き方改革なる方針を表明し、
飲食業界も大手を筆頭に具体的な、
働き方の改革に着手し出してきております。


素晴らしいことと思います。

飲食業は、長時間労働と長時間拘束、
不透明は給与体系、常に危険と隣り合わせ、
残念ながら現場では、あらゆるハラスメントも存在し、
現代の若者からは、敬遠されてしまう一面も存在しております。

いまだに店舗の現場では、高い喫煙率が災いし、
リクルートが上手くいかない側面もあります。

現場のスタッフは、そのことに向き合おうとはせず、
回避している状況も見受けられます。

これらの原因のほとんどが、理念の欠如によるものです。

先ほどご紹介した九州の社長は、
食中毒事件の前は、売り上げの事ばかり考えていた。
それが会社経営だと思っていたと仰っていました。

しかし、事件を経験し大きな気付きを得られ、
地域の方々にいかに貢献できるのか、
いかに喜んでいただけるのか、
どれだけ従業員を幸せに出来るのか、
企業としての拡大よりも、
いかにして強い企業体、経営体質となるのか、
利益がお客様からの信頼の証であること、
利益の本質は何であるかを、
常に自問自答しているそうです。


拡大戦略ではなく、成長戦略だと、
会社規模の膨張ではなく、確実な成長であると、
お目にかかる度に仰っております。


現在では、年商も順調に推移され、
店舗ベースの利益率も向上し、
効率の良い店舗運営、会社経営をなさっております。

離職率は低下し、リクルートも順調なようです。

理念経営は、今後益々重要な経営戦略となります。

明日は、具体的に理念の構築の仕方と、
運用方法などをお伝えします。

是非、参考になさって新たな理念を構築してみてください。



確実な価値と、豊かな成果のために
2018年11月06日(火) No.284 (経営関連)

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