美味しい料理と売れる商品 その2


前回のブログでは、おいしい料理と売れる商品は違いをお伝えし、
売れる商品を開発するための手法の一部を公開するとお伝えしました。

今日はお約束通り、商品開発手法の一部を公開します。


さて、飲食ビジネスを考えると、
一番良い方向性と結果は何かと伺えば、
ほぼ間違いなく、
美味しくて売れる商品の開発だと、
皆さん仰います。

どなたでも賛同できる答えだと思います。


一般的に調理人は、素材の特性を生かし、
その存在感や味の方向性を前面に主張した料理が、
おいしいと定義しているように見受けられます。

これはプロとして見れば当たり前のことです。


常に、素材と向き合い調理をしているわけですから、
料理と向き合うと素材の特性を最大限に引き出すことを、
真っ先に考えることは至極当然のことです。


一方、経営的な観点から商品開発を考えると、
商品原価のことが発想の根本にあり、
その商品は売れるのか、利益は出るのか、
誰にでも調理できるオペレーションなのか、
このようなことが念頭に来てしまいます。


また、マーケティングのことや、
流通性や認知度とパフォーマンス面など、
売る為の戦略的なことを考慮します。



すると、どうなるかというと、
美味しいを定義する前に、
オペレーションとコスト意識がフィルターになり、
開発中の商品を、純粋に美味しい食べ物として、
認識することが出来なくなってしまいます。


フィルターがかかってしまっているので、
ある意味当然と言えば当然です。


いつしかそのようなことに、調理人も影響され、
経営的な観点を学習し、商品を開発するようになります。

本来であれば、調理人は純粋に食材と商品だけに集中し、
勿論、原価意識は当然強く持っていますが、
真摯に向き合って商品開発をするのが本筋と思いますが、
どうしても経営的な観点が先に立つようになりすぎてしまい、
一般的に美味しい料理も売れる商品も出来ない、
中途半端なことになってしまします。


基本となる商品の強さではない部分に意識が分散し、
入れても入れなくても良い見栄えのための食材を追加し、
原価を上げ手間を増やし、味をブレさせてしまいます。

コストを意識しすぎるから、商品の追及度と完成度が下がり、
おいしく魅力的な商品には、なり切れなくなってしまいます。


もしくは逆に、原価を無視した行き過ぎてしまう商品を作ってしまい、
再現性が低く、売れる商品なのか、儲かる商品なのかといえば、
疑問が出て来るような商品を作ってしまいます。

ビジネスの観点から考えると、
いろいろなハードルがありすぎて、
商品化は難しいということになってしまいます。


外食産業では、この美味しいと売れることの、
バランスをとることが、最も大切だと言えます。


そのためにも、正しい商品開発手法を学ぶことは、
非常に重要になっています。


では、どのように商品開発を行えば効率よく、
常に人気のある商品でもあり、儲かる商品を開発出来るのかと言えば、
まず、行う作業はメニューコンセプトを作ることです。

そんなことかと、思いになるかもしれませんが、
メニューコンセプトをキチンと作らない会社も、
開発者も非常に多くいます。

メニューコンセプトが無いから、
そもそもの開発基準が、
共有されないことになっております。

言葉と画像で開発したい商品を表現しないので、
関係者が全員全く違ったゴールを意識しております。

ここが、調理人が何を基準に商品開発をすればよいのか、
メニュー開発をすればよいのかわからないところです。

ゴールが明確でないまま、とりあえず何かを作ってみる、
そんな感じになっております。


私は常日頃、メニューコンセプトを最も大事に考えております。
業態の特性を表現し、業態コンセプトを具現化するのは、
商品であり、その基準がメニューコンセプトです。


もし、「肉汁たっぷりのハンバーグ専門店」が業態コンセプトなら、
どのお客様も肉汁たっぷりのハンバーグを注文し、
楽しまれると思います。
それがコンセプト通りの結果と言えますが、
もし、テーブルにハンバーグカレーとパスタとサラダばかり乗っていたら、
コンセプトとはちょっと違ったお店と言うことです。

そうです、コンセプトはテーブルに反映されます。

そこで、最初に行うことがメニューコンセプトを作り、
コンセプトを共有することです。

ゴールを明確にし、共有する、そのことが開発作業の第一です。

メニューコンセプトに盛りこむことで大事なのは、
消費形態をどのように設定するのかということです。

商品の方向性を明確にし、メイン食材と商品を選択し、
お客様の滞在時間を想定し、何品オーダーしていただき、
トータルで何グラムになり、消費時間はどの程度の設定で楽しまれ、
満足度のポイントは何なのかを明確にすることです。

私以外に見たことが無いのですが、
お客様の滞在時間を設定する、
トータルのグラム数を想定することは、
とても重要なことです。


お客様からどの程度のお時間を頂戴できるのか、
満腹状態をどの程度提供するのか、
その設定は大事です。


調理時間と消費時間がかかりすぎれば、
リピート率が下がり、
回転率も悪くなります。


満腹状態が低ければ、コストパフォーマンスに影響が出て、
小食の方しかこない店になるなど、
好ましい結果にはならなくなってしまいます。


メイン商品の美味しいの定義をどこにするのか、
表現したいことはどのようなことなのか。

そのことを明確に文字に、画像にする必要があります。


それが出来上がり、コンセプトの共有が図れてから、
商品試作は始まります。


なので、いきなり商品を作ることは、私はしません。


ここからは、前回のブログで書いた、
ラーメン業態で、私が行った事例を公開しますで、
参考にしていただければ幸いです。


その業態は、味噌ラーメンが主力の業態でしたが、
まず行ったことは、味の設計図を作ることでした。

味噌ラーメンの何を表現したいのか、
商品が提供されたときに、まず何を感じさせたいのか、
香りを感じた時にどこをくすぐりたいのか、
口に含んだときに、味の方向性はどこにもっていきたいのか、
など、言葉で表現し文字に書き、一つずつ整理していきました。


そこで、具体的な商品の完成形を視覚的にイメージし、
素材の一つ一つを分解し、組み立てなおしました。


ラーメンの基本となるスープの方向性は、
味噌の一番表現したい味のポイントは、
旨味なのか、コクなのか、キレは、後味と余韻は、
ラーメンの華である、焼豚はどう提供するのか、
ないがしろにされているもやしを戦略的に使い、
おいしいと感じてもらえるためにはどうするのか、など、
いくつかの要素を分解しその場で組み立直しました。


商品的なインパクトを表現し、
よりおいしく感じさせるために提供方法も変更しました。

野菜を炒めるタイプの味噌ラーメでしたが、
オーダーごとに焼豚を手切りして、炙る手法でしたが、
手間の割に美味しくならないばかりか、
ブレ幅も大きかったので、余計な工程をカットし、
焼豚をもっとおいしくさせ、
調理オペレーションも簡単にしました。

提供時間は1分近く短縮されました。

オペレーションを簡単にし、おいしくなり、
もやしを戦略的に活用することで原価も低減し、
同じ味噌ラーメンを、より強力な商品に仕立てあげました。


今までご利用いただいていたお客様にも、
全く違う商品になったという認識ではなく、
さらにおいしくなったという認識を、
上手に落とし込むことに成功しました。


商品開発で大切なことは、
まず、おいしいの定義を決め、
純粋に素材と商品に向き合うこと。


ある程度そのポイントがクリアーされてから、
オペレーションやコストのことを考えるようにすることが、
おいしくて売れる商品開発には大切です。


外食ビジネスで必要なのは、
おいしくて売れる商品の開発のノウハウです。
正しい開発手法を会得することが一番大切です。

経営者の経験値と感性だけで、
経営者の好みの味で商品開発をしてはいけません。

消費者に受け入れられる、
マーケットインの発想で商品開発をする必要があり、
ヒット商品になるための必須条件です。


正しい手法のその先に、売れる商品化があります。




確実な価値と、豊かな成果のために
2018年07月11日(水) No.262 (商品関連)

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